出版評論〜blog版

評論家のバーバラ・アスカが出版業界その他いろいろ語るblog
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連載『「本の値段がどこでも同じという摩訶不思議」について考えてみた』第2回
 再販制についての連載第2回です。
 タイトル変えました。
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(続き)

 Amazon(日本版 http://www.amazon.co.jp/)とは、ご存じの通り、世界最大のインターネット通販書店だ。
 Amazonには、「Amazon e託販売サービス」(http://advantage.amazon.co.jp/gp/vendor/public/join)というサービスがある。平たく言えば、小規模メーカーが作った書籍やグッズなどを、Amazonに納品すると、販売、発送作業をすべてやってくれる、というシステムである。
 書籍を販売する場合、必要なものは書籍JANコード、いわゆるバーコードで、それがあれば、我が出版評論社のような弱小サークルの本でも扱ってくれるとのこと(とのこと、というのは、これを書いている二〇〇八年四月五日現在、出版評論社は登録のみで、書籍の販売を開始していないからである)。
 私だっていろいろなところで私の本を買っていただきたい。さっそくISBNと書籍JANコードの手続を取り(注2)、Amazon e託販売サービスに登録した。

 そこで、気になったのは「価格決定権」についてである。
 「Amazon e託販売サービス よくある質問」の「7. 委託した商品のAmazon.co.jp上での販売価格は、どのように決定されますか?」(http://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=108734011#payment)によると、

 「再販制度該当商品は、定価通り販売します。それ以外の商品に関してはAmazon.co.jpが判断し決定しています。ただし、参加者へのお支払いはご登録時に入力いただいた価格(定価/参考価格)をもとに算出し、Amazon.co.jp上での販売価格とは関係ありません。」

 とある。(注3)

 つまり、「再販制度該当商品」の「書籍」については、定価、つまり出版社が提示した金額で販売する、ということだ。しかし「非再販本」つまり、「再販制度に該当しない書籍」(注4)についてはAmazonが販売価格決定権を持つ。ただし、出版社への支払はこちらの提示した価格にて算出される。Amazonが安くしようが高くしようが、出版社への支払金額は変わらない。

 ううむ。
 ウチがAmazonに委託する場合、「再販本」にするべきなのか?
 それとも「非再販本」にするべきなのか?

 この状況では、いやでも再販制度に興味を持たざるを得ない。
 このときから、私にとって再販制度は大いに関係ある事柄になったのである。

 これからごくわかりやすく、再販制度について説明したり考えたりしてみようと思う。
 しばらくの間、おつき合いいただきたい。

(注2)Amazon e託販売サービスに必要なISBNと書籍JANコードの取得手続はこちらのホームページに記載してある。
 http://www.isbn-center.jp/shutoku/
 中身はともあれ、ISBNを取得し、バーコードを規定通り裏表紙(表4、と呼ばれる)に印刷してしまえば、取次を経由するいわゆる「普通の商業本」と全く変わらなくなる。

(注3) 早とちりな私はこの前半だけを読んで、「げええ! そ、それでは非再販本にすると、Amazonが価格を決めちゃうわけ? 委託販売返品OKの状況でそれをやられると、こっちの収入がAmazonの判断によって増えたり減ったりしちゃうじゃん! これは、早速再販制に賛成せねばならないぞ」と思ってしまった。
 まったくお恥ずかしい話で、「餅つけ」「よく嫁」である。

(注4)「非再販本」とは、いわゆる「自由価格本」のことである。トーハンホームページの「トーハン用語事典」(http://www.tohan.jp/key-word/)によると、

【自由価格本(非再販本)】
 ほとんどの出版物は定価販売されているが、出版社の意思で販売価格に定価を設定しないものをこう呼ぶ。自由価格本には、当初から自由価格で発行する「部分再販」と、再販本として流通した後に自由価格化する「時限再販」があるが、現在「バーゲンブックフェア」等で出回っているのは後者。トーハンではこの自由価格本を年2回(4月・10月)単品受注方式にて、書店に提供している。なお、こうした本は従来から古書ルートで「新本」と呼ばれて流通している。類似のものに、最近増えている新種の古書店で扱う「新古本」があるが、こちらは一度消費者の手を経ているので「古書」の扱いになる。

 ということである。
 ちなみに、「トーハン」は日本最大の書籍取次会社である。

(続く)



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| バーバラ・アスカ | 『「本の値段がどこでも同じという摩訶不思議」について考えてみた』 | 10:51 | - | trackbacks(0) | -
連載 『「本の値段がどこでも同じという摩訶不思議」について考えてみた』 第1回
 たまには出版評論ぽいこともしようかと、再販制についての連載を始めることにしました。飽きるまでは続けますが、気の変わりやすい私のこと、いつまでもつことやら。
 よろしければ、おつきあいください。

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『「本の値段がどこでも同じという摩訶不思議」について考えてみた』

◆◆はじめに 〜私が再販制に興味を持つようになった理由

 「再販制」。
 出版業界における問題を語られるときにセットで必ず出てくる単語である。
 私も出版評論家などという看板を上げていると、初対面からいきなり「ほう、出版評論家さんですか。それでは再販制についてはどう思われますか?」と聞かれることがひっじょーに多い。
 言うなれば、再販制の「問題」は、出版業界における問題の中で「もっともメジャーな問題」らしいのである。
 個人的には、「もっとほかに問題にすることがあるだろう!」と言いたい気分なのだが、私は別に世界の王様ではないので、皆さんが「再販制が出版業界の中で最も重大な問題である!」とおっしゃるのであれば、「再販制が出版業界の中で最もメジャーな問題である」ということに異論はない。

 これまでの私は再販制について聞かれたときの答えは決まって「興味ありません」であった。
 なぜって、私が出版業界に関わるときの立場は「著者」と「読者」である。その二者にとっては、再販制なんて「アチラの世界のオハナシ」にしか感じないのである。
 本の価格がどうなろうが、再販制がどうなろうが、そもそも「著者に自著価格の最終決定権」はない。出版社が「この価格でいくことに決めました」と言われたら「わかりました」と言うしかないのである。著者にとって出版社は神様ですから(注1)。
 「再販制が撤廃されたら著書が倍売れるようになる」「印税率が倍になる」というのであれば私も目の色を変えるが、まあ、そんなことはありえない。私にとって出版業界の問題とは「原稿料が安すぎる」とか「支払がイイカゲン」とか「入金までのサイクルが遅すぎる」とか、再販制とはあまり関係ないことばかりなので、これまでは「再販制については興味ありません」という立場を取ってきた。

 しかし、先日、その興味なかった再販制が突如として「おおいに私に関係ある問題」としてクローズアップされてきたのである。
 それは、amazonとの取引開始による。
 
 (注1)「読者」でないところにご注目ください。著者は「読者要求」と「出版社要求」が異なった場合、「出版社要求」を取るしかありません。そうしないと本が出せませんから。

(続く)



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